ルカ、異邦人のための福音   服部真里子

  • 投稿日:2018年12月01日
  • カテゴリー:短歌

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ルカ、異邦人のための福音   服部真里子

つばさの端のかすめるような口づけが冬の私を名づけて去った
縫い針はしきりにさやり雨だった頃のあなたをほのめかすのだ
死者の持つホチキス生者の持つホチキスしろがねはつか響きあう夜
海峡を越えてかすかに翳りゆく蝶のこころとすれ違いたり
北窓の明かりの中に立っているあなたにエアホッケーの才能
遠い日の火事さえ私の名を呼ぶよカモメたち刃のように飛び交い
復讐を遂げていっそう輝けるわたしの幻ののどぼとけ
犬のことでたくさん泣いたあとに見てコーヒーフロートをきれいと思う
ふいの雨のあかるさに塩粒こぼれルカ、異邦人のための福音
横なぐりの雪 ではなく雪柳くずれた後の道で会いたい
金雀えにしだの花見てすぐに気がふれる おめでとうっていつでも言える
だとしてもあなたの原野あしたまた勇敢な雪が降りますように
アランセーターひかり細かに編み込まれ君に真白き歳月しずむ

『遠くの敵や硝子を』(書肆侃侃房 2018年)より

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