月影り 亜久津 歩

月影り 亜久津 歩

十二月の街
祝福の底の小銭を拾えば
冷たさが広がってゆく
安い光は要らないか

死ぬは黒く 死は白い
横断歩道を渡り切れ
廃信号を斃す仕事は
貧しい人のものになる

消えてなくなればいいと思う 心に
消えてくれと願いながら歩いた
逃れたい 縛りつけて
嗅ぎ分ける術を持たぬ犬たち

空は黒く 眼は白い
静かな鉄格子を摑む
枷の重みが妬ましく
自由に溺れる獣だった

月光に愛を代入する祈り
虚ろなら 虚ろなまま
きみの棺になろう

真冬の月は剝き出しなのに
なんて綺麗なんだろう
なんで綺麗なんだろう
生きているくせに
愛されたくらいで

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