斬首刑        木嶋章夫

  • 投稿日:2012年10月19日
  • カテゴリー:短歌


 斬首刑          木嶋章夫

すぐ逢いにきてくれないか読んでいる本に落丁みつけてしまう

雷を待ちこがれるか避雷針こもる部屋から空をみている

うしなった背びれをゆらす 潮の香の夜霧に町がつつまれるとき

わが胸に響いてやまず電線の五線譜上に満月ゆれて

下の句のぬりつぶされた相聞歌兄の遺したノートのなかに

夭折の兄の年齢おいこして蝉の穴へと向日葵を挿す

こころ病むときだけすわる椅子がある光とどかぬ海底の椅子

返り血をあびて夕焼け校門に首を落とした向日葵のせる

妹と熊蝉をふむ夕まぐれ婦人科でのみ夫婦であった

窓辺にてきらめく針と月面に埋葬された針の意識と

つぎつぎと星は流れて海岸にオレンジひとつ転がっている

逢いたいと伝えられずに酔芙蓉うすくれないに色づいてゆく

蛇となるためにきみから抜けおちてベッドの下にもぐる髪の毛

はじめてのひとの命日 飛行機のなかで花火を見下ろしている

革命か 首を落とされ冬の地になお立ちつくす皇帝ダリア

作者紹介

  • 木嶋章夫(きじま・あきお)

1972年 千葉県茂原市生まれ。
2009年 「短歌人」入会。
2011年 髙瀬賞佳作。
文芸同人誌サークル「ストカスト」主催。

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