官能駅 柴田千晶
蛾のようなワンピース着て青岬
トランクに媚薬と玩具薔薇の雨
滝田ゆうの色町のごと凌霄花
官能てふ駅のありけり狐百合
死者たちの岸辺のごとし白紫陽花
白鯉の髭に神通力満ちぬ
幽霊画に描き足す赤子山うつぎ
六月の袋に入る男かな
斑猫の顔は父なり日暮れけり
目覚めてもまだある死体グラリオサ
執筆者紹介
柴田千晶(しばた・ちあき)
1960年、横須賀生まれ。
1988年第5回現代詩ラ・メール新人賞、2008年詩集『セラフィタ氏』で第40回横浜詩人会賞受賞。句集『赤き毛皮』(金雀枝舎)、『超新撰21』(邑書林)。
詩誌「hotel 第2章」、俳句誌「街」同人。余白句会メンバー。