脳、嬰児、安堵、独活 そらし といろ
細い水の流れる音が上空から聞こえて
とうとう辿り着いたというような顔で
雨粒を受ける手の平の仕草を繰り返す
乾いた空気こそ水を求めて枯れ果てた
彼果て損ない手の指でかきむしる喉元
森に見立てた公園は木々を間引きされ
伐採された切り株からほとばしるのは
ノルウェイサーモンピンク色の夕焼け
果て損ないの彼には足元の粉々の枯葉
ぐずぐず底抜ける感覚が靴底からひた
ひたのぼってやってくる地底で静謐に
吹くマントルの熱対流は研がれた大鎌
さばかれてさばかれてあかくかれはて
かれはてるのためらいきずからうみが
かわをそめるこがねくれない落葉焚き
焚き火のはぜる音が足元から聞こえて
縦へ踏み割ったどんぐりの生白い身
血の気の薄い彼の小指と見比べて
そっと気が触れているお互いに
(彼はあの人の記憶の溝に存在する
針を落とせばいつでも再生される
都合の良い彼になっても果てない)
細い水流は降らずおきびもおこらず
三人目のお前が影を舞台に縫いつけ
劇の幕は上がったきり降りてこない