ヌード 中山俊一
みんなしてぼくを そうした薄膜の青春を脱ぐときの万歳
セミヌードからヘアヌードへ移りゆく季節のなかで透きとおるもの
トランプを半裸で切って春の夜にひとまず並べた。ひとりの手品
椅子という女の名に似た家具だから二本の脚で立つべきである
ひどく傷付いたんだねテレヴィジョン点けよう明るく愉しいはずさ
賑やかなことの淋しさふたり観る『さんま御殿』の後の立食
卒業の塗り潰されてゆく写真■■■
ランニングしながら喋った思春期の内側ばかり擦り減った靴
ローファーの踵を踏んで、どうか秋、少女を淋しくしないでおくれ
室外機の風に揺れてる髪だった愛しさのあと知ったことだが
月の夜のうさぎの餅つき その餅の放物線に
闇夜から梯子が垂れて救助用ボートに架かる出逢いのように
象の眼に蝋燭の火が揺れている こんなに大きいのにきえそうだ
パスタ100gを摑む 束ねるにはみじかい髪を束ねたような
どうにでもなれとどうにかしてくれの夕暮れ だれかと喧嘩がしたい
遮断機の向こうに十五の我がいて(電車が過ぎる)羨ましくもない
おでんには色んなかたちの具があって愉しい冬の晩酌だった
酔いどれのちゃんちゃらおかしい盆踊りちゃかしてちゃんちゃら酔っ払う
焼き鳥を串から外す。そのように腕枕のうで引き抜く夜は
かなしい話の終わりにあなたは「ちゃんちゃん」と添えて笑った夢に降る雪
中山俊一
1992年、東京生まれ。
映画監督としてUFPFF国際平和映像祭2012入選、脚本家として第19回水戸短編映像祭グランプリ。
2016年、歌集『水銀飛行』上梓。