中略   堀田季何

  • 投稿日:2019年08月04日
  • カテゴリー:短歌

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中略   堀田季何

自死の報一部始終を読み了へてそのに戻るいま四回目
目をつよくつむれば冥き夜見にをりあさくつむれば業火のもなか
血肉への聖変化るこの暫し焼肉出づる待つ児のごとし
祈りをへ神の答へを待つあひだ黙しにもくし黙してもくす
一粒の塩が舌に載り人ひとり塩の柱と化するまで須臾
卓上の塩壺に塩盈ちてをり蓋を取るまで波打ちてをり
ガラス製グラスを棚にしまふなりカップとコップのあはひの奥に
冷し麦茶に砂糖一塊はちと多し二塊に割つて一塊入れつ
一頭の一万分の一の肉じんわり旨し豚汁一杯
豚肉を噛むに一本欠いてをり代り一本歯科にてもらふ
あらたしき歯をあらたなる歯とおもふ一時間ほど舐めたるのちに
まがなしくバウムクーヘン八分の一を食むなり七食みしのち
どこまでが季何のからだか例ふれば鼻腔の空気、胃の中の柿
おほぞらにおほぞら色の穴あれば一羽落ちたりはらりと消えぬ
とほく見ゆる広告気球アドバルーンのたまの緒を絶ちたし絶てば楽になれるなあ

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