中略 堀田季何
自死の報一部始終を読み了へてその始に戻るいま四回目
目をつよくつむれば冥き夜見にをりあさくつむれば業火のもなか
血肉への聖変化守るこの暫し焼肉出づる待つ児のごとし
祈りをへ神の答へを待つあひだ黙しにもくし黙してもくす
一粒の塩が舌に載り人ひとり塩の柱と化するまで須臾
卓上の塩壺に塩盈ちてをり蓋を取るまで波打ちてをり
ガラス製グラスを棚にしまふなりカップとコップのあはひの奥に
冷し麦茶に砂糖一塊はちと多し二塊に割つて一塊入れつ
一頭の一万分の一の肉じんわり旨し豚汁一杯
豚肉を噛むに一本欠いてをり代り一本歯科にてもらふ
あらたしき歯をあらたなる歯とおもふ一時間ほど舐めたるのちに
まがなしくバウムクーヘン八分の一を食むなり七食みしのち
どこまでが季何のからだか例ふれば鼻腔の空気、胃の中の柿
おほぞらにおほぞら色の穴あれば一羽落ちたりはらりと消えぬ
とほく見ゆる広告気球のたまの緒を絶ちたし絶てば楽になれるなあ