胡乱な力 生沼義朗
がま口の口にあらざるところから口開いてきて硬貨は洩れる
そういえば、食べ物購うときにしか主に使わぬ財布なりけり
レシートとファストフードの割引券もていずこまで膨らむ財布
労働はそんなに酷か 財布には大田胃酸とノーシンもあり
残金をやたら気にする生活は木馬で荒野を旅するごとし
金だって原発だって同じこと、つまり胡乱な力なるらむ
鉄道に今日も命が消えている。鉄とは金を失うと書く
〈金のため〉が大義にならず〈仕事のため〉が大義になるあたりよりおかしい
何を今さら、という声聴こゆさりながらそこで躓くゆえ仕方なし
あたらしき財布購う またしばらくこれがあらゆるものを支える