六月 戸田響子
蛇口をひねると次々に
流れ出てくる
ミニチュアダックスフンド
シンクを歩き回り
回りながら排水溝にむかっていく
そのうちの一匹と
目が
合う
雲厚くアスファルトには枇杷の皮
森を抜けるととても広いところに出る
一面にメロンパンが自生していて
メロンパンの網目が地平線まで続く
そのうちのひとつと
目が
合う
空をさす葵隣家のくしゃみ聞く
家電量販店のテレビ売り場の
テレビのひとつ
ニュースキャスターのひとりと
目が
合い
「鉄のフライパンを使いこめ」
フライパンを贖って帰る
蛇口からはまだ
ミニチュアダックスフンドが
流れて続けている
シンクに水垢と黴と犬のふん
遠くから国家が聞こえてくる
コッカコーラ
マイクロコッカス
コッカースパニエル
地下室からサンバのリズム
シンクにあふれたミニチュアダックスフンドが
憤怒
憤怒
鉄のフライパンをたたき割る
憤怒
憤怒
遠く森の方から
メロンパンが焼ける
いい香りだ
水無月のヨーグルトから月がでる