ぶよぶよ 西生ゆかり
朝起きるとあなたの心になつてゐた
名前も顔も髪の長さも
開いた時に見える黒子も
桃の甘さを悦ぶ舌も
全部わたしのままなのに
心だけがあなた
なのだつた
(ぷりん)
(ましゆまろ)
(ぴえろのまぶた)
桃の中まで来てゐるぶよぶよ
あなたの心が欲しいぶよぶよ
ぶよぶよがぶよぶよを呼ぶ
ぶよぶよが呼ぶよぶよぶよ
動いてゐる(うごいてゐるね)
蠢いてゐる(うごめいてゐるね)
冷蔵庫と壁の間にずつとゐる
ぶよぶよがぶよぶよを呼ぶ
ぶよぶよが呼ぶよぶよぶよ
裸ではない人ばかりテレビには出てゐて皆大変さうだ
呼ばれてゐない大きなぶよぶよが窓の外で蠢いてゐる
(うごめいてゐるね)
あなたの心が欲しいぶよぶよ
あなたの心が呼んだぶよぶよ