詩にならず
鈴木 総史
埃払へばひかりなき男雛の眼
雁供養沖は紅茶のごとく揺れ
うつくしき嘴にかひろぐ春田かな
翡翠のさざなみに触れ月に触れ
音もなく蟻の巣は蟻吐き出して
さはやかに謹呈本を売りにゆく
螺子穴のつぶれて台風が怖い
すぐ醒める夢ばかり見る炬燵かな
凍港や漁船はうるはしく干され
地吹雪のなか詩にならず死にきれず
略歴(鈴木総史=すずき そうし)
1996年生まれ。「群青」同人、「雪華」同人。俳人協会会員。
作品集「微熱」にて、第37回北海道新聞俳句賞を受賞。
連作「雨の予感」にて、第11回星野立子新人賞を受賞。 2024年2月に第一句集を上梓予定。