
カンガルー
松本 てふこ
レーズンのあはくねぢれて花祭
紅椿の奥なる工業地帯かな
春夕焼鳥居は海に晒されて
銀天街抜けて黄砂の十字路に
春暑くATMの狭さかな
金髪の根元黒ずみ桜の実
おろおろと蛍を詠みて帰りけり
紫陽花に色わたくしに更年期
旱星酔へば睫毛のくつきりと
日盛に四肢投げ出してカンガルー
略プロフィール
昭和五十六年生まれ。「童子」同人。平成二十三年『俳コレ』(邑書林)に参加。平成三十年、第五回芝不器男俳句新人賞中村和弘奨励賞受賞。句集『汗の果実』(邑書林)。