連載短歌第2回
うつつ
安田 茜
かなしさを海に喩えることこそが間違ってるよきっとそうだよ
うつくしい足先が水をかき乱すその水までも否定し尽くす
絶対にあなたのことを許さないそもそもわたしは崖にいるから
救いのない話を嫌う人といてでもつらいのは雨のせいじゃない
なみだ出る立ちつくしてるはなびらは水をはじいて軽めに跳ねる
鳥たちが南を目指すそのあいだ私は私で過ごしているから
生活に足りないものは無いはずのでもあの本が青い童話が
とはいえわたしも麒麟は好きだから困る 焼き切れそうな夕日を睨む
グロッケンちりちり曲の中で鳴るゆううつきっとしぬまでうつつ
具体的に言えばきわめて暑い日の胸にかくした水銀の刃だ
死ぬまでをふたりはずっと共にいたおたがい違う月を見ながら
おうどんのかきあげがおいしかったこと夜のあかりとして取り出した
攻撃性 みんなあたまをかかえつつ涼しくもない秋をゆくのね
その御伽噺にはつづきがあって、王子はしあわせになった 結局
うるさいな硝子の嵐なんだからだれもが痛いのはあたりまえ