夢のち夢の 未補

夢のち夢の
未補

糸口のないねむりは、昔こいびとだった人のくせ毛に似ていた。
冬にしてはめずらしい、鳶色の雨がポストを撫でている。
去年買った手のり文鳥は、あて先を無くしたファンファーレ。
siiと名づけたその鳥は、水音を拒み、ウエハースの上で排泄する。
わたしは、わたしのはんぶんが、化石になった気分がして、どうにかそれをしたためようと、シャワーを浴びる。
乱反射する半過去が、排水口を嚥下して、とてもうるさいのに。
思い出すことといえば、ゆうべが誕生日だったこと。
窓辺には、二度と鳴らない目覚まし時計があること。
傘はいよいよねむりをほつれて、鈍色の雪に変わろうとしている。
昔こいびとだった人の背中は、今ごろ誰かの部屋を孵しているだろうか。
起き抜けに架空の天気予報を告げる癖は、相変わらずだろうか。
さいわい、と言うには遠く、さびしい、と言うには、あまりに浅い天井が降りかかる。
見る、見ない、見せる、見られる、見せあう、を、どうか、夢のち夢の朝。

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