ターミナル・ポイント21 田中 眞由美

ターミナル・ポイント21 田中 眞由美

灰色の時が淀むと
ポイント20からのバスが 現れる

足場もないほどの満員に
疲れ果て眉間に皺を寄せて
誰もが振り返りもせずに
足早にステップを降り
逃げるように雑踏に紛れ込む

せかされるままに背中を押され
乗車の代償に何を支払うかも
行先をも確かめずここまで来た
とりあえず此処に着いた後ろめたさが
彼らを追い立てるが
降りるしか選択の道はない

やみくもに
手さぐりでつくった未知だけれど

また
黒い時が下りてきて
行き先が不明のバスがくる

此処から先の路線はますますの手さぐりで
終着駅の表示は無い
暗い顔の乗車希望のひとの群れが
少しずつ増えてくるが
出発するかどうかも不明のままで

それでもまた
此処から押し出されていく者たちは
代償に何を支払うかに瞳をこらしこらして
未来を握りしめ
ステップを登らなくてはならない

ポイント・22へ行くのか
ポイント20へ戻るのか
バスに委ねられたままの時が過ぎていく
                 2024・3・5 「詩歌梁山泊」へ

略歴
詩集『しろい風の中で』『コピー用紙がめくれるので』など
受賞 「「詩と創造」賞」「長野県詩人賞」「埼玉文芸賞」など

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