第9回詩歌トライアスロン三詩型鼎立部門受賞連載 木星紀年法 尾内 甲太郎

第9回詩歌トライアスロン三詩型鼎立部門受賞連載
木星紀年法
尾内甲太郎

絶滅への遠さ 許されていないことさえ許してもアネモネの花
あたらしい反乱軍をふたりしてつくろう耳を歯を青く塗り
日時計は自分が針になるあそびマクドナルドのポテト塩なし
占いはこぼしたものを戻せないあしたの水はあしたに汲めば
耳穴の線を垂らす人は減っている むかしとなった鎖骨と蝶と
タロットカードへ遊戯王カードが混ざる十年後という闇よ
通貨と呼ぶ軽さ かなしい頬に書くアラビア文字の直立へ弾
人体に植物の部位あるという きっと根も葉もない噂かも
日本語に主語なんてない むかつけばむかつかされたと思いこめちゃう
動けなくなった人を動かして(dream machine)記憶の砂は濡れ
アナーキストの黒は#000000ではないらしい#000001くらいの光だという
透明な傘ばかりゆく群衆のたったひとつの群青は君
ホモサピエンスにことばは早い 怒っている輩のための鉄柵が要る
県名は割り当てられた性でありこんど眠りにおいでとか言う
永遠につづく人生の一日を生きてみたいな 瓜のロシア語
人類植物化計画なかばにて髭につぼみのふくらむ季節
事務所ではいつでも飯を炊いておくいつ帰っても飢えないように
空気圧 かつて言われたことだけをタイヤに詰めて転がしてゆく
数式の先にいつしか雲が湧きそこから先は誰もが魔物
地球規模の失恋があり一匹の青蝿溶けて消える砂糖壺
表現の自由があって反乱はしろつめくさの野を焼いている
みずどりの play with me潦(にわたずみ)ひかりのためのワルツを埋めて
ぎゅっとペンネ いつかはアラビアータ 誰もがみんな誰かの椅子だ
まっとうなプリン 抹香鯨にも終わりが来るとでたらめカラメル
究極の今日! なんにもしなかった午前! なんにもないだろう午後! (タルトタタン)
こころのなかの長澤まなみが吹き込んだカセットテープは戻る 梅雨明け
急に来て急に帰ってハズレくじ 象はぜったい頭から喰う
行くことはないだろう嶼の古書店のホームページにアロワナ画像
醤油と紹興酒のバランスがどこへ行っても絵の具半島
パームワインはピーナッツバターってことだろうソイソースとは世界の半分
鈍器本ということばは嫌いということばは嫌い書物はつねに武器であるべし
支援物資に入れるなら魏武註孫子 見えないものを見せようとして
徒花は獣を喰らう草という 時計仕掛けの葉はみな歯なの
恐竜はあんなに好きだったんだけど散らばる化石 コーラを飲もう
茶のかおり赤信号を待っている車を待っているニホンカモシカ
蚊のスピードで (永遠)を燃やすスピードで これから指ではじくスピードで
シャイニング缶詰 ちょっとこぼれたくらいの果汁がおいしい
鳩を二羽とじこめたようさわがしい記憶へはさむプレパラート
人類が上書きされる将来を誰もが感じ誰も知らない
太陽へ叛意を抱け 父母と似ている耳をもたないこども

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