マーブルソフト
歌﨑 功恵
朝焼けの橋を渡れば自転車を蜻蛉の群れが追い越してゆく
混沌という名のパンよ初めての退職代行退職者 出て
カサンドラ症候群だとおもう日の雨に冷えゆく膵臓の島
純粋な水は殺傷能力があるよと聞けば眼を伏せている
悲しみを等価交換できぬ日もまあるいままの私の膝は
ペットボトルで取引されたカラフルなメダカは泳ぐ白昼の鉢
旅人とセカンドネームを持つ猫が窓から戻り爆睡をする
金箔と金の違いを赤裸々にせぬままにしてやさしいけんか
システムを扱うボタンと人間を抱く瞬間の相違を述べよ
私たちどこまでいっても乖離してそれでもわけ合うマーブルソフト