連載第2回 夏の葬送 亜久津歩

連載第2回
夏の葬送
亜久津 歩

1 食卓
傷んだ桃は元に戻らない
殴れば窪み 窪みから腐る
でも恨んでいたから崩れなかった
顔も覚えられないくせに
忘れるべきことばかり憶えている
だから愛しさには
性懲りもなく尾を振ってしまう

2 海辺
次次に 無造作に
突き立てられる花火殻
骨までしゃぶり尽くすように光ろうとも
ジュ。と鳴っておしまい
それがむしろ嬉しい
汚水に浸かるつめたさと
己が汚物であるさびしさ

3 空き地
悪い冗談のような訃報が届いた
あてもなく靴を履く朝
どちらかといえば嫌いだった
傷だらけだからって
好き勝手噛みつきやがって
憧れてもいた
先に死にやがって

わたし犬が好きでさ、
だから犬死したいんだよ
だからこのまま埋めるからね
さよなら。

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