不在の輪郭 亜久津歩
さへづりや造花の茎を磨きをり
風船の薄きところのかがやきぬ
ひこばえや詩集の余白濃かりけり
花冷えの紅茶の湯気を吸ふ少女
否応なく生まるる蝶や脳ひらく
しくらめん機械仕掛けの犬と泣く
AIに雲雀見せたる水辺かな
「春望をクラウドに保存しますか」
あたたかき雨ふくみたる腕かな
春夕焼逆光のきみ先に夜
亜久津 歩(あくつ・あゆむ)
詩人。日本現代詩人会、子連れ句会、育児クラスタ短歌会。Poe-Zine「CMYK」同人・発行人。
第一回萩原朔太郎記念「とをるもう」賞、第三回詩歌トライアスロン受賞。