ぬめり 瀬戸優理子
蓮ひらく生まれるときは頭から
裸の子羽搏きそうな耳を持ち
顔寄せて空蝉のやぶけたところ
虹の色数える産んでいる途中
天金の詩集余白に星の砂
梳る音短夜の波の音
一族にはみ出さず居る夏座敷
面取りの刃のぬめり走り藷
鎮痛剤ほたるぶくろに飲ませたか
夜濯の結婚指輪泡立ちぬ
瀬戸優理子(せと ゆりこ)
昭和47年東京生まれ。北海道在住。
平成27年、第33回現代俳句新人賞受賞。
平成29年、第一句集『告白』刊行。同書
にて第32回北海道新聞俳句賞佳作。
『WA』『ペガサス』『蘖通信』所属。