来迎まで 来住野 恵子
あえ あうえ 妙なる地獄の召喚
ロオマ字変換された夜
無色無臭の遺言がきらめいた
看取られぬ死の
千の竈がひらかれて
t a s u k e t e
ひかりあぶく沼沢地から輝線スペクトル
た 他に
す 素に
け 気に
て 手に
押し殺された悲嘆を喰らい
湧きあがる虹色の
鼻声涙声どろまみれの子どもら
飛んでゆく宙を吐き出し
日蝕の闇を拾い上げれば翼だ
水には溶けない
海にもかえらない
あかあかとした正気が可燃気体となって
太古の森を滑空する
羊歯の胞子ひとつの希望は飢え
わたり来る小さな
肺いっぱいの浄土
そこから
つぶさに地上の喪をさらえ
予め毒だから毒を浴びても死ねないおまえは
巨大な夕陽のかけらをふくみ
運ばれてゆくひとすじの
藁しべほどの彼岸の青