再会 岡田ユアン
エジプトの壁画にある神官のような横顔で
子は ラーラーと泣いた
朝の気配などまだどこにもない空間
それどころか
瑠璃色の宇宙を閉じ込めたような一室で
見知らぬ海のさざ波を生むように
張りつめ ふるえる声
祈りのようでもあり
哀しみのようでもある響きに
まだ 母になりきれない女は
うろたえ 畏まる
女の様子を感じとったのか
いっとき泣き止んだ子が瞼をあけ
はじめて女を見る
瞳には 生まれたばかりの
双子の惑星が浮かんでいた
それは 現時にいたるまでのはるかな物語を
せつなに読み解いたような光を放ち
懐かしさに満ちていた
手にあまる 小さな火色の命に恐れをなし
女も 子をまねて
ラーラーと泣いた