泰山木 中堂けいこ
げしのよる げしのよる
一音の濁にめざめる よりそう う あまやかな
泰山の全山をおおう う 調香師ゲランの
深夜に烈しく匂う よるなのだよ
ひきよせる なにものか
ひざまずく人の背後におびただしい亀裂が走り
ひざまずく人の輪のなかに創負いが寝かされ かされ
白い花の蕊にかされよる
寝かされた人の頭蓋を二の腕に添わせ
そうよ、この人に間違いありません
さいごの息を深深と吸い込み
半月に負うのだった
背後に擾乱の気配がして
さめさめと捕縛についていく
かれらは背信者だ
裂かれた創をわすれよ