Tuesday, July 16, 2013 黄泉 野村龍
木曜日の右側から
希薄な猿が手を伸ばしている
罅の入った火炎を
或いは金色の翼を
掴み取ろうとするかのように
雑然とした書斎で
魂を
握られたことがありますか
血まみれの手紙は
皺々の耳から滑り込む
(つむじ風は たちまち香りに気付き
カプセルに隠された井戸を 指だけでたやすく探り当てる)
スライスした雨蛙で出来た歯車が
何処かで歌い始めるとき
溶け出した時計の裏側で
澄江堂主人がひとり
声帯を震わせながら 星のように
今 ぬるりと産み落とされる