雨宿 暁方ミセイ
夕立は今に止んで、熱を下げる草叢。川垂れる乳色。苦い。
めちゃくちゃに倒れた草が
傷ついた匂いを充満させ、
湿気た風
わたしは細胞が苛立った、肌が苛立った、
放電のように、欲求が疾駆する。
草の剣先を駈巡り、
風景のなかに、
きみを感知しようとしている。
刺激する紫の電流が
藍色を塗りこめる草の匂いが、きみを告げまた薄闇に隠す。
さっきから視界の端で、
ちらちらと動いている、
懊悩の
赤い牛は、左側頭部あたりから走り出してきた。
一頭で、
ぐしゃぐしゃな久遠の顔。
ひどく濁った鶴見川が、大きく右に折れるポイントで、
牛は
ずぶ濡れで
わたしを待っている。
そいつを追い回せ。
正面へ回って、何度でも対峙しろ。
この川は、さみしさのど真ん中を抱き込んで、青く噎びながら流れる。
きみやわたしの射込む思念が
膨大な感情にかわり
山川を白く染める。篠突く雨。冷たい百年が、わたしの横を流れ落ちる。