雨宿 暁方ミセイ

自由詩暁方130502

雨宿   暁方ミセイ

夕立は今に止んで、熱を下げる草叢。川垂れる乳色。苦い。
 
めちゃくちゃに倒れた草が
傷ついた匂いを充満させ、
湿気た風
わたしは細胞が苛立った、肌が苛立った、
放電のように、欲求が疾駆する。
草の剣先を駈巡り、
風景のなかに、
きみを感知しようとしている。
 
刺激する紫の電流が
藍色を塗りこめる草の匂いが、きみを告げまた薄闇に隠す。
さっきから視界の端で、
ちらちらと動いている、
懊悩の
赤い牛は、左側頭部あたりから走り出してきた。
一頭で、
ぐしゃぐしゃな久遠の顔。
ひどく濁った鶴見川が、大きく右に折れるポイントで、
牛は
ずぶ濡れで
わたしを待っている。
 
そいつを追い回せ。
正面へ回って、何度でも対峙しろ。
この川は、さみしさのど真ん中を抱き込んで、青く噎びながら流れる。
きみやわたしの射込む思念が
膨大な感情にかわり
山川を白く染める。篠突く雨。冷たい百年が、わたしの横を流れ落ちる。

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