雪の降る音 望月 遊馬

雪の降る音
望月 遊馬

風下に雪とピアスが混じり合いわたしの声は天国になる

あなたにも複数形があるのなら切り分けましょう冬のケーキを

   *

雪粒が、遮光カーテンのむこうに物理的に存在を色濃くしている。降るたびに、音楽があった。わたしはすこし眠たげな顔をしている彼のむこうに夕陽が沈むのを目撃した。山は乳白に響き渡る。すえひろがりの星々。重たい光のなかにも何億年の堆積層。うっすらと笑う小鳥。入射角に沿って飛び込むトビウオ。どのように豊かな風がここを吹いても、乾いた声がひらり、ひらり、と浜を舞い踊っている。ばい菌にも美しさがある。それを吹聴するために、わたしはオーボエを叩き壊した。輝かしい音がする。たっぷりと口のなかで暴れている空。どんなときも、信じている勇者。その背から流れだしてきた真珠。その真珠を首飾りにするために子どもたちが拾い集めている。こんな恐竜。どんな決戦。明らかなる森。森のつややかなる。丁寧に包帯を巻く所作がうるわしい。TOKYOの夜明け。頬骨から滝が流れだして来る。うっとりと聴き分けるヘルツ。ところどころに落ちかかった頭蓋骨。咲いている。咲いている。超絶技巧のでんぐりがえり。わたしは最後まであきらめないで、浮世と波。返礼品にさえお辞儀をする。美しいものを見すぎてしまった瞳を人生の比喩にするために。わたしを見つめるあなたの瞳の、奥の奥の億の星を置く。守るための。

   *

奥の奥、億の億だけ星を撒き冷たい足で川を渡ろう

磨かれるたびに輝く君の骨、標本箱にそっと仕舞って

尊いわ、あなたは尊い キッチンに置かれたままの石像二体

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