日めくり詩歌 短歌(藤原龍一郎)

大地震の間なき余震のその夜をあはれ二時間眠りたるらし
仙台市 坂本捷子

「朝日歌壇」四月十日 永田和宏選 佐佐木幸綱選


 朝日歌壇は、他の新聞歌壇とは異なり、投稿者が選者を指定する
のではなく、投稿されたすべての作品を四人の選者全員が選歌する
システムとなっている。そのために、同じ作品が複数の選者に選ば
れることもあり、そういった複数選の作品には☆印があたまに付さ
れることになっている。

 掲出歌は、四月十日の「朝日歌壇」で、永田和宏、佐佐木幸綱の
二人の選者が特選に選んでいる。永田和宏は「余震の中でも寝てし
まった。それほどに疲れていたのだ。」、佐佐木幸綱は「生き物とし
ての人間の生理がことさらにクローズアップされる被災地の夜。ま
さに「あはれ」である。」との評言を付している。

 恐怖感、不安感、不快感、緊張感に神経が張り詰めていても、極
度の疲労によって、眠りに落ちてしまったというぎりぎりの状態を
詠っている。仙台市に住んでいる作者は、被災者であろう。眠った
のは一緒に避難している家族か、知人か。

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