日めくり詩歌 短歌 斎藤寛 (2011/7/1)

寒がりな身体をいくら重ねても心臓の鳴る場所は違うの 小川莉奈


「NHK短歌」(2011年5月22日)の入選作より。たしか、作者の居住地の順で入選9首の冒頭に紹介された作品だった。一読、「心臓の鳴る場所は違うの」にグッときてしまって、この歌が一席だったらいいなあ、と思って見ていたら、選者の佐伯裕子さんは、やはりこの歌を一席に採ってくださった。作者は17歳だそうだ。「寒がりな身体」だから体温が、ぬくもりが欲しい。でも、はだかの胸で高鳴っているわたしの心臓とあなたの心臓を、重ね合わせることはできない、と詠う歌。これはひとつの発見であろう、と思った。求め合いながらも孤独な影を帯びてしまう若い身体がもたらした発見の歌だ。「心臓の鳴る場所は違うの」は暗喩としても読めるし、作者もその意を込めたのだろうが、先ずはひりひりとするような具体で読みたい、その後に倍音としてうっすらと暗喩性が伴って来ればそれでいい、と思う。

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