日めくり詩歌 短歌 藤原龍一郎(2011/9/20)

テレビに鳴る地震警報かの日日の警報はもつと恐ろしかつた

吉田和人「警報」「短歌」五月号


 テレビ、ラジオ、ケータイ電話から、緊急地震速報が鳴り響くと、皆一様に緊張と不安を浮かべた表情になる日々が続いている。作者はこれに空襲警報を重ね合わせている。大正十四年生れの吉田和人は、学徒出陣世代であろうか。いずれにせよ、かの戦時の緊張感を知っている歌人である。同時発表の作品には次のような歌もある。

登校の途中警報に引き返し命拾ひし八月九日
被爆より四日目長崎の焼跡に友を探しし私の贖罪
長崎に浴びし放射能いかほどか白煙あがる福島原発

 戦争と東日本大震災とが重ねあわされる必然性が伝わってくる。

作者紹介

吉田和人・大正14年生・「草木」所属

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