日めくり詩歌 短歌 斎藤寛(2011/10/11)

起きぬけに鎮魂曲を聴く習ひ今日の目覚めのなきもののため    田内正夫

日経歌壇(2010年1月10日)に掲載された作品。昨年1月の掲載作だが、今年の3月11日以降にこの歌を読んだ者は、当然、その状況を加味して鑑賞することになるだろう。深い祈りの歌である。僕も仏教徒のはしくれなので、起きぬけに合掌する。このように目覚めたことを感謝し、他界された方々をはじめとして三千世界の幸いを祈り、もしもこのように「われ」として目覚めることがなかったのだとしたら、その永遠の眠りに身をゆだねたい、というようなことを朝ごとにうっすらと思う。あえて言えば、この歌が今年の3月11日以降の状況を加味して読まれるような時間のレンジには、いずれ終りが来ると思う。生死を思い、祈ることは、本来は特定の日付に拘束されるような所作ではないからだ。人間とは死者を弔う動物である、という定義があるが、まことに人間とは、食って寝るのみにあらず、眠りから覚めれば深く深く祈る存在なのである。

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