日めくり詩歌 俳句 高山れおな (2012/05/23) « 詩客 SHIKAKU – 詩歌梁山泊 ~ 三詩型交流企画 公式サイト

日めくり詩歌 俳句 高山れおな (2012/05/23)

八十七番 卒業

左持

蝌蚪散つて天日うごく水のうへ 島谷征良

蝌蚪の水割れて日輪重たき日 森岡正作

珍しい句集を頂戴した。島谷征良と森岡正作が大学卒業時に共同で編んだ『卒業』である。単行句集でも合同句集でもない二人句集。一九七二年に國學院大學俳句研究會から刊行されたものを、このほど四十年ぶりに復刻したのである。文庫サイズの小冊であるところも初々しくこのもしい。まえ半分が「島谷征良集」、うしろ半分が「森岡正作集」になっていて、それぞれの所属結社の師である石川桂郎と能村登四郎が序を寄せている。

学生俳句会以来の長いキャリアを持ち、地味ながら堅実に活動してこられた方々である。この句集の作品も、若書きであるにもかかわらず、とにかく端正で乱れがない。特に、次ような句は佳いと思った。

梅雨深む赤せうびんの一つ音に 島谷征良
疼きくる齒に舌當てて雨の鵙 同
灯せば肋あらはや秋簾 同
麻刈女夕日に頰をあらはにす 森岡正作
發想の一瞬昂じ白雨來る 同
陰干の絹の匂ひて凍て緊まる 同

両者、作風に著しい差はないが、あえていえば島谷の方がより穏やかで客観的な作風、森岡は時に主観的観念的な表現を取ることがあるようだ。左右の掲句は、蝌蚪と太陽という共通の素材で作られているが、両者の志向の微妙な違いがよく現れた例かと思う。両句共に虚子の

天日のうつりて暗し蝌蚪の水

を意識しながら表現を探っているのは明らかだろう。左句の方が完成度では勝っていようが、それだけに虚子の句に接近しすぎているところが気になる。持でよいのでは。

季語 左右ともに蝌蚪(春)

作者紹介

  • 島谷征良(しまたに・せいろう)

一九四九年生まれ。一九七六年、「一葦」を創刊主宰。

  • 森岡正作(もりおか・しょうさく)

一九四九年生まれ。一九九八年、「出航」を創刊主宰。

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