浅草に売る舞踏靴冬の星 日原傳
浅草雷門奥、伝法院通り、新仲見世通りを貫く仲見世商店街。
昼は観光客で程良く賑わった煉瓦造りの近代仲見世も閑散として
自転車を引き歩く学生などが歩くばかり。
同じような電灯で照らされる街並み、
よく見ると観光客向けの模造刀や扇子、人形焼などの店舗だけではなく、日常品を売る店も多い。
東京西側のおしゃれな街並みとは対照的な下町「浅草」。
スカイツリーが出来たことで観光客が増えたものの、古き良き下町とは、古めかしくどこか庶民的な東京ではローカルな地域ともいえる。
斯く言う私も下町「根岸」で生まれ育った地元民。
揚句の情景は容易く思い浮かんだ。
雑多と商品が並べられている店舗。
「ダンスシューズ」と大きく書かれたボードが掲げられ、
その下には特にピカピカできらびやかな靴が並ぶ。
華やかな靴には不似合いな店内の「SALE」のPOP用紙と相俟って、
いかにも下町らしい生活の匂いがしてくる光景だ。
しかし揚句にはその生活臭がない。
その場で歳月を重ねるであろう浅草の舞踏靴の寂しさが透けてみえるだけ。
身をなぐるごとくに毛布干されけり
- 参考文献
日原傳句集『此君』「(2008年 ふらんす堂)所収