第8回詩歌トライアスロン三詩型融合部門受賞作 遺駅   豊田 隼人

第8回詩歌トライアスロン三詩型融合部門受賞作
遺駅
豊田 隼人

さかむけの駅を保護する
港は遠くて、役立たず
霧の流れる
店は黒を売っている
入り乱れる、時
浅はかな 顔
よしたほうがいい
列車が直に出る

誘われる遠浅の霧芬々と 見て、いつも通りに列車は出ている

遺稿を抱いている
地面を掘り返して
大きくなれよと
霧片を敷く
駅前から
走ってくる
人々の額に
おかしな話が
添付されている
夜、
感情は原稿用紙一枚だった

遺志を走らせる列車のぼんやりにおでこのような駅舎のかたち

意識が霧のような音で
崩れていく、
山間を走る列車の
つまびらかに
叫ぶ
カーブに差し掛かれば
先頭車両の醜態が
音に隠れているのが見える
気おくれした人の名前
ハンドリテンの
文章は
紅かった
冒頭の名前だけで
価値が高い
そのうえ相関図をつくってもいい
色。

山間に狭霧を叫ぶ一号車

聞きそびれた
わ、
プラットホームで
誰かを見失う
他人を発表する
わな、
蝸牛の口角
似たような声が
ラジオから
聴こえた
わなな、
見世物になった
人を
助けたいと思った
強欲になれない男は
ひとりで
生きた
その名前を
わななく、
遺したものが
どこかに
埋められている

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