





第11回詩歌トライアスロン三詩型鼎立部門奨励賞
短歌「拝啓」俳句「夜更し」自由詩「おへそやさん」
綱長井 ハツオ
短歌「拝啓」
拝啓 一匹になれないオオカミへ 中略 ひとりぼっちの蜂より
信号に新たな色を付け足そう紫色なら背伸びをひとつ
ブランコを右によじれば左へと、左によじれば右へともどる
夕立に傘を開こう大空へクジャクの羽根のようにバサっと
カルピスに水がとくとく注がれてにごりが混じる前のしずかさ
水槽のメダカもエビも寄ってくるなんだか温かそうな小石
あの明るい星を目玉にはめ込めば涙のでない強い目玉だ
歯みがきもお風呂も終えて今日一日がんばりきったお尻をほめる
背の丈も心も大きくなっていく臍のサイズは変わらないまま
幸せに近づきすぎたイカロスはやっぱり幸せそうだよ いいなぁ
俳句「夜更し」
夏休みへその中には毛のなくて
どの角から食べるおにぎり蝉しぐれ
ねむたさに抱える青いプールかばん
絵日記や描けるだけ汗描きこんで
夜更しの金魚に薄い額かな
さいころの角の丸みや踊唄
暑さ残ってピザの裏側まったいら
枝豆やジュクジュクと実を押し出して
かまきりの重心前へ移るところ
きっちりと鋏閉じきる鵙日和
自由詩「おへそやさん」
小さな森の小さなおうち
そこがみんなのおへそやさん
今日もお客がやってきた
おへそがどこかに逃げたみたい
ネジの形のおへそをつける
ねじねじ、くりり、ねじくりり!
あれれ、おなかがメソメソだ
ごめんね、これは悲しいおへそ
違うおへそをつけてあげる
今度はクギのようなおへそだ
とんとん、かちり、とんかちり!
あれれ、おなかがイライラだ
ごめんね、これは怒ったおへそ
違うおへそをつけてあげる
そいじゃボタンのようなおへそを
ぬいぬい、ちくく、ぬいちくく!
ようやく、おなかがニコニコね
よかった、これが嬉しいおへそ
おへそが逃げたらまた来てね
ばいばい!
小さな森の小さなおうち
そこがみんなのおへそやさん
今日もお客がやってきた
おへそが穴を閉じたみたい
ぐっとおへそを手で開けてみる
ぐぐぐっ、ぐぐい、ぐぐぐぐい!
あれれ、おなかがシクシクだ
ごめんね、おへそが悲しいね
次こそおへそを開けてあげる
今度はおへそを針で突っつく
つつつっ、つつん、つつつつん!
あれれ、おなかがプンプンだ
ごめんね、おへそが怒ったね
次こそおへそを開けてあげる
そいじゃおへそにお水をあげる
ちょろちょろ、ちょろろ、ちょろちょろろ!
ようやくおなかがウキウキね
よかった、おへそが開いて明るい
おへそが閉じたらまた来てね
ばいばい!
小さな森の小さなおうち
そこがみんなのおへそやさん
今日もお客がやってきた
おへそがハチのおうちみたい
おへそのハチに息ふきかける
ふっふっ、ふふー、ふっふふー!
あれれ、おなかがショボショボだ
ごめんね、ハチさん悲しいね
次こそハチさんなんとかするね
今度はおへそのチャイムを鳴らす
ぴんぽん、ぽぴん、ぴんぽぴん!
あれれ、おなかがカンカンだ
ごめんね、ハチが怒ったね
次こそハチさんなんとかするね
そいじゃおなかにお花を植える
そよそよ、ふわり、そよふわり!
ようやくおなかがルンルンね
よかった、ハチさん楽しくブンブン
おへそのハチさんとまた来てね
ばいばい!
小さな森の小さなおうち
そこがみんなのおへそやさん
今日はお客がやってこない
おへその平和が続くといいね
ばいばい!