第8回詩歌トライアスロン融合作品受賞連載第1回 待てば唇 豊田 隼人

第8回詩歌トライアスロン融合作品受賞連載第1回
待てば唇
豊田 隼人

震え落ちる
日付
にテレビの告知が
思い出され
砂糖を煮詰めている鍋の

‶ゴンゴン〟と
音が印象派の画材になる

春驟雨『ゴドーを待ちながら』を挫折

甘ったるい裏庭にて
彼の来訪を待つ
窓辺に
小説家の水飲み場を設け
恋愛、
薄氷の道を描写しないような
読了を
希望する

キスだけを望む貌(かたち)や牛角力

飲泉のコップを持って朧月

泳ぎ出す
アングラの温泉宿を予約し
夜空が利き手を探す
月齢は
私の体温に連動することを
対価として
失われていく
唇には
あなたみたいに明るい色がのる

化け物を前に孤独は美しい「わたしの臓物一吸いでいく?」

体内に残るのは
現在、啓蒙活動中のUSB端子と
暗く澄み切った唇の
発する 花と肉塊
あなたがここにいることが
印象的な
春のスナック菓子を食べる
私は食べて、種を
蒔く 階段

サマーオレンジの皮をおろせば僕からこどもが産まれてくるって

彼の飲んだぬるま湯は涼しくて
僕を待っている
時折
パン作り教室の広告チラシの
日付
ハイライターで
滲んで
よく見える
物語と僕のこども
を産んでしまって
Chromeのシークレットタブが
彼の「恋愛感情とは」
夏の腕を
示して
月が欠けた

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