第8回詩歌トライアスロン融合部門受賞連載第4回 今日の一句 さ青

第8回詩歌トライアスロン融合部門受賞連載第4回
今日の一句 さ青

「おはようございます。今朝の花は、ノアザミです」
「蕾がかわゆい」
 誤字を教えたらすぐ修正されてしまって、それはそうよねって思うのだけれど、ちょっと無粋にも感じられてそれから不思議とさみしくもあったの。紙面から活字をスキャンして作られたサイトだったからかしら。移転する時しばらく同じ内容のサイトが二つ存在していたけれど、新サイトは同じ箇所が誤字ったままだったの、なんだか嬉しかった。それってなんでだろって何故か何度も思い返してしまう。複製される時に生まれる差違が愛おしさを模してしまうのかしらね。愛おしさがゴーストっぽいのかしらね。小さな間違いが私には綿菓子を、あなたにはソナタを与えるのかしらね。魂は円口類の口を持っていて、ほっぺた辺りを五円玉の穴くらい食いちぎるのよ。いま見てきたら修正されちゃってた。
「今日は何かしたいのだけれど何かしたいという気持ちがストレスになるみたい」
 言葉から意味を無くす方法ってあるんだろうか。鳥の鳴き真似をしてみれば初めは鳥も騙されるけれど、発信者が意味を分かっていなければその言葉は、皮膚の痒みにフジツボが生え揃うようなもので、出鱈目を鳥でもすぐに理解する。言葉には在るべき場所があるように、鳥はあなたを無視するわ。でも、鳴き真似を続けて森の中を歩いてゆけば、その鳴き真似はあなただけの囀りになるんじゃない? もう鳥は耳を傾けてはくれないんだもの。それを私は森の外から聞いていて、その鳥の名を調べています。
「右眼が白い。貴方にとっての左眼が」
 いつも通り目が覚めていつも通り起き出してしまった休日の、午前中をのんびり過ごすと午後には酷く疲れている。おととい撮った写真を見返せば、連写の中で近づいてゆく石垣に蜥蜴が、日没後もしばらく残る温もりで恍惚を太らs《婚姻色》逃ぇrゥおぅ!
「全く眠れませんでした。思考が頭を占拠する。困ったな。とりあえず柏餅を食べよう」
 誤字を見つけた折の柔らかな口角で風に靡いているつもりだったんでしょう、指さすことはお節介で(女神が嫉妬と番わされても)誤読がいつも明るい方にいる。それなら平凡な表現を間違えやすい字面で綴ってみて、斜陽を受けて飛ぶ翼の裏側が輝いて白く見えた時のように、手放そう。でなければ昨日とは置き方を変えただけの水皿で猫の気を引く。小さな改変、そのささやかをあなたのペン立てに紛れ込ませるわ。
「頭からありんこが一匹落ちてきました」

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