第9回詩歌トライアスロン三詩型鼎立部門受賞連載 郵便的な、あまりに郵便的な 尾内 甲太郎

第9回詩歌トライアスロン三詩型鼎立部門受賞連載 郵便的な、あまりに郵便的な
尾内 甲太郎

飛ぶための翼ではないただうまく落ちてゆくため伸ばした翼
息となることばかけあう冬の日のまばゆい糸を断たれぬように
美容室の受箱はみなうらがわと知ってから雨 森は遠いね
予告された郵便の記録 昨夜から横隔膜が冷えていたんだ
右折する車に道をふさがれて口から髪の生えてくる恋
誤配され怒鳴るお客へ言いたいな「すこしワクワクしませんでした?」
ちょうどいいところでやめた解体の仏壇の戸は 開こうとする
しろさざんか黙って殴りあいをして声を漏らさず立ち去ってゆく
忘れられたら人は二度死ぬというけれど死なせてほしい赤いさざんか
聖地より禁足地がいい ふるさとが詩のなんらかになるというなら
時間を噛む 牛乳を噛んで飲むように昨日が明日の骨になるように
被害者と加害者の錯誤 恒星の色はあおいろたとえ飢えても
繊細なふりはしなくていいんだよふたりを包むアーモンドのにおい
レターパックで現金送れはすべて詐欺 お届け先が自分であっても
うすい感熱紙 次のお客の分がもう印刷されて寒い朝だな
勾配はどこにもないよ冬の薔薇 ぼくらの歪んだ人格の他に
亜種のいないホモサピエンスは差別したい 林檎の白と梨の赤さを
とりこぼしのない恐ろしさ金髪の幽霊が出てタピオカを乞う
地図を書く 蝶を見つけた町をもう忘れていると思いだすため
少年Aからの手紙は来なかった、ともに世界を滅ぼせたのに

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