森 須永紀子
どのような入り方をしても
いきなり深い
そのように森はあった
抜け道はふさがれ
穴は隠されて
踏み迷う
空を裂く
鳥の声は小さな悲鳴
両手を泳がせ
枝をかきわけて
つくる小径
星と虫
死骸の層に靴は沈み
凶兆の泥が付着する
実と見れば齧り
青くしびれる舌
角。
壁。
目印。
町にあって
ここにないもの。
それなしではつかめない
方向もやりかたも
愚かさに見合った
わたしの小さな森で
行き暮れる
出口は地上ではなく
他にある
そこまではわかったが
急激に落下する闇に
閉ざされてしまう