空を向く 渡辺めぐみ


空を向く 渡辺めぐみ

新緑の黄緑が好きです 
とわたしは言った 
早朝の曇り空は 
どこまでもわだかまっていたが 
果ての見えない 
光を透かさない白さが 
贖いえない 
人の行為の値であるのかもしれなかった 
 
信じていいですか 
 
未だ地球の哀しみを感じることのできるわたしは 
今度は声を出さずに問いかけた 
 
歩きは時間を通り抜け 
わたしとその人の身体を通り抜け 
蔑まれたものの 
硬い甲羅のなかを 
静かに通過した 
 
未来の子供たちのためだとは言いません 
わたしたちは 
今を押し流してゆくものに 
火をかけたいだけなのではないでしょうか 
誠実な誠実な太陽の子は死にました 
干し草のように 
わたしはもはや 
火を広げるためだけにあるのです 
 
道の両側の家々は 
音を立てなかった 
そこに営まれている 
幸せの 不幸せの 
密やかな歴史を 
吐く息ではねつけながら 
わたしたちは 
レインコートの襟を立てて 
どこかの目的地に向かっていた 
 
本当の愛を埋めにゆくのだ 
今度こそ 
そう思いたかった

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One Response to “空を向く 渡辺めぐみ”


  1. ワタナベトウフ
    on 12月 6th, 2012
    @

    となりのお店で俳句を
    はっぴょうさせていただいております
    渡辺とうふです

    同じ会期で発表させていただいて
    なんだかお名前がとても縁を感じてしまって

    おさわがせでご迷惑かもしれませんが
    空を向くの詩から
    俳句を詠ませていただきました

     渡辺とうふ

     あなたの吐く息と干し草を火の枕に
     
     まっ白いカラスの群れのレインコートよ
     
     新緑を埋め立てたきみの白地図

     

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