冬の骨 淺山泰美


冬の骨 淺山泰美

子守唄が止み 
冬が近くなった 
縁側に 
西日の名残りがあった 
 
隣の家との境の 
柿の古木が一本 
枝に 
すでに茶色い実が三つ 
他には何もなく 
今年も暮れてゆく 
母の煮た 
南瓜の味が懐かしい 
 
春に 
空き家となった隣家の 
丸窓に灯っていた明かりの記憶に 
木枯らしが吹く 
消息が失われて久しい 
子供の指が 
重い本の頁をめくるように 
すぐそばまで 
冬が来ている 
 
その路地を曲がれば 
途方に暮れ 
白い犬が 
姿のない主を待っているだろう 
わたしたちがこの世でできることなど いつも 
たかが知れている 
たとえば 
白い山茶花が散る 
ゆうぐれ 
ふいに 
刻の足音が消え 
地に 
しんしんとした冷たさが降る 
虚空に 
月さえ凍る 
冬が来たのである

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