シンラのために 野村喜和夫

自由詩野村130315

シンラのために 野村喜和夫

(存在の)家に近づく。
 
それは間違いないが、私とは誰か。
 
母の遠さの黄昏がある。
 
それは間違いないが、うっそうと樹木が生い茂り、雨上がりのせいか全体にじめじめしている。家に近づいていくとその
まわりでさまざまな動物たちがかたちを成しはじめる。アニメでも見ているように地面の一部が盛り上がり、土まんじ
ゅうのようになったと思うと、そこから泥を振り払うようにしてオオトカゲのかたちがあらわれる、といったふうに。
 
耳のなかはシンラ。万象のシンラ。(言語への)声の終わりが戯れる。
 
もっと足元ちかくの地面にはS字の模様が描かれている。覗き込むとそれがみるみる立体的になり、生気を帯び、次の瞬
間には蛇そのものとなってくねくねしはじめる。多くはそのようにして爬虫類系の生き物たちがかたちを成すから家のま
わりはたちまちおぞましい雰囲気に包まれる。だがそこを通らなければ家に到達することができないのだ。
 
母の遠さの黄昏が深まり、寒くはないが、私とは誰か。
 
(存在の)微光がある。

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