サイロ 渡辺めぐみ

詩・渡辺130405-1
詩・渡辺130405-2

サイロ 渡辺めぐみ

サンクチュアリの窓辺から
尖塔が見え
尖塔を上下に行き交うエレベーターの在りかを
光の点滅が告げていた日
窓いっぱいに溢れる光は
明日を受胎していた
重症患者の瞼には
それは眩しすぎたので
誰かが幕を下ろした
 
トリアージュ 選別
 
すべてを生かすことはできないので
生かせる命を守らなくてはいけない
ということ
 
サンクチュアリの精霊たちの唱える
掟である
その掟から外れる者は
するすると階段を降ろされる
 
黒いコートで喪を纏い
春を渡ってなんになっただろう
いつものように緑のコートを着て
街を歩いた
 
答えを授からないように
それは新緑の中
 
誰にも知られずに答えが育つように
芽吹きの膨らみの知恵に見守られて
 
わかっています
何もかも埋葬されたことは
 
けれどもあの日々
苦い水ばかり飲んでいたことを
いつかは苦くなくなる
と言ってくれた人のことを
忘れることはありません
 
答えは宙吊りになっている
 
あの尖塔の見える建物のことを
思い出すだけで
緑が伸びてゆく
サンクチュアリの
断裁機の孤独を突き抜けて
密やかなもののために
伸びてゆく
 
泣かないで下さい
笑うことは無理だとしても
 
答えは宙吊りになっている
 
裂かれるまで
緑の深みへ

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