Thursday, January 24, 2013 地図 野村龍
泡のなかで 口笛は眠っている
蜃気楼を越えて 濡れた栞が飛んでいく
光は 素足のまま
動物園の入口で待っている
時間は柔らかい
また かすかに苦い
眼差しの 長い髪が
恥じらう流れの底で 豊かに揺らめく
《「この息は菫の宝物
雫は そっと花弁を舐めた」と書いてある》
誰も知らない色の天使と
姿を失った歌
無言で輝く瞳に 数え切れない香りが射込まれ
泉は ねっとりと渦巻く
煌めく数式に包まれて
美しかった文字は溶けていく
母の彼方では もう
彗星が乾き始めていると言う