作品 286番 ・ 329番 江夏名枝

江夏詩130927

作品 286番 ・ 329番 江夏名枝

(286番) 
 
さぐるような目をする男がいるので
わたしは また眠くなる
壁のむこうに 赤いユリの丘があって
黒豹たちが駆けてきても
眠りの途中にあるから みんな食べてしまう 
 
 (329番) 
 
山羊たちがドアを抜けて入ってきた 
赤いガウンを着ているから 
きっと悪いしらせね 
わたしは はたきをかけられ 
埃をはらわれて きれいになる
山羊たちは揃って黄色いマニキュアを塗り
しんがりが手紙を口にくわえている
ふるびた月ばかりが 裾からちらつき
メトロノームが効いて唾液は明るくなるばかり
耳のうしろを撫であやすと
ふたつ折りの便箋が しらせを失くした 
首をかしげ
夜のなかに黄色い毛糸を吐いている
わたしは手紙を口にくわえて
鏡の底まで 探している
 
 
 
〈高階杞一『ティッシュの鉄人』(2003年・詩学社)に寄せる習作の一部〉

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