らぶり  加藤健次

加藤詩131206

らぶり  加藤健次

やわらかい丸みをもった話について
話してみよう
そう思っているけれど
うまく思いだせない
まあ、いい。
愛をらぶりと読む娘がカレとかけおちして
また帰ってくる
ホームドラムのような
話のなかで
許してくれないならでていくと言いはる場面で
だまっていたら
それじゃあ仕方ないと言ってひとり娘はかけおちした
あなたはなにもわかってない
と言おうとしたが言えなかった
こどもにたいしてあなたはこどもだと言えない
わかってしまうことと
たのしく暮らすこと
があらそって
しわくちゃになって
こころというこころに乱反射して
言いたいけど言えないことだけが光っている
そういうもの、だろうか?
やはりがまんしていたのかもしれない
そこに風がふいて
水面に波がながれ
さらに下のほうから
つまりぼくの海底からひきあげてきたばかりの
濃度のたかい塩の声で
きみは笑う
話のなかでは
笑うべきところでもないのに

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