胡桃(午前五時 渡辺玄英

【7月26日掲載】自由詩 胡桃(午前五時

胡桃(午前五時 渡辺玄英

明日はあさく眠り(右の手首を落としていた
胡桃をかたく握りしめていた(おとずれないきおく
(ここにあるものがここにはない
生きている未来から 死んだ未来を眺めている
(手首だけでなく(足もなくしている
 
昨日はあさく眠り(もうすぐ背中が消えてしまう
胡桃のなかに荒れる波(の記憶を握りしめて
(ここにないものがここにはある
死んだ未来から 生きている過去を眺めている
(背中だけでなく(もう顔もなくしている
 
午前五時 空の下 海の上
どこにも漂着しないおそれ
これまでたいけんしたことのない
ふかい安堵をかんじている
豊かにそそがれた時間の波間で(分岐する
なんどもつかんでいた手をはなしてしまった
(失くした(くるみのなかの(忘れられない声を
(声たちを
 
(それから胡桃を握りしめた
しずかに青い静脈のういた手ノ甲の
きえたキズのキオクの薄い疼き
(気づいてあげられなかったと後悔しないでください
 と記憶がいう
 
今日はどこにもたどりつかない
手首も足も背中もきえて
(ずっといなかったきおくがある

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