岸   川津望

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岸   川津望

君が向こう岸でたじろいでいる
笹舟はたそがれに閉じこめられ
昨日の水際に置き去られたままだ
ゴミ収集車が奇妙に生き生きと街をまわり
かんがいやシソーを消費期限ぎれとする
残飯と見なされた夕暮れも
回転板に掻きあげられた
押し込められる一艘一艘の逝く
あの闇の草いきれで
共有された息の消息

君はもう
ぼくに待っていてと告げない
待たせている現在がなくなったから
生活は分断された
よく遊んだ川に
青いビニールシートがかけられた晩
ぼくは月がきれいだね、と
たずねなくなった もはや
フルムーンの甘美さは呼びかけられないだろう
欲せられたのはぼくを貫くシステムでしかない
運搬される掌
かつて灯に寄せて
ひらいていった
指先に指先が乗り互いの敷居をなぞって
名指し得ない感情のへりを辿ってはいけない
それは屹立する法に穴を穿つ鑿だから
鉄は鉄とて熱いうちに打つことで
名のない涯となるのを恐れて
断崖にも花は降る
それは違反か
抱擁で僅かにぬくみ
指紋しか残らない君の身体と
ぼくの身体の間にフェンスが設置される
それを希望というか

あけがた 器官よりもごつごつした水流が
君を取り巻いている
笑っている
スカートはめくれあがり
泥だらけのショーツが足首までおろされている
さみしいから
あたし何でもよかったの
あたしが楽しければいいって皆はおしえてくれた
彼らが安心して裸にする
君は笑っている

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