内戦(3)   野村喜和夫

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内戦(3)   野村喜和夫

(野を行く)

俺ら、野を行く、
野に、かぎろひの、立つ、
みえず、野に、
原発か、あれは、
けぶり、立つ、みえ、
原発か、あれは、
世界一脆弱な地のうえに立つ、
なんという勇気だ、
けぶり、立つ、みえ、
それともあらたな、
「世界の火薬庫」の、さきぶれか、
俺ら、きめた、
world’ s end という名の、
店をひらく、world’ s end という名の、
未知のドラッグを売る、

(スピンアウト)

俺ら、無言のうちに、
跳ぶ、はねる、
襲う、

奴らを毛なしに、してやろう、
でなければ、俺らが毛なしに、されてしまうぞ、
俺ら、アジア的身体、
おびやかされている、
おびやかされている、

俺ら、戸籍に縛られ、番号で呼ばれ、
静かに収奪され、でも俺ら、ひたたひたた、
ひとのその静かに、
穴を穿ち、怒りの気持ち、
忍び込ませる、俺ら、林立する、
にせの塔のガラス砕き、
そのうえで踊る、

俺ら、乱流にみちた気象、
無数の渦を形成し、その渦の、崩壊するそのまにまに、
俺ら、スピンアウトする、
スピンアウトする、

(魂のクローン)

俺ら、想像力がありすぎる俺ら、
小さき者たちの命の叫びや、
死者たちの声さえ聴こえてしまう俺ら、
想像力がありすぎる俺ら、

魂のクローン、痕、
魂のクローン、渦、

「俺ら、学費は目ん玉とびでるほど高いし、
奨学金は即借金のヤミ金融、
ブラックなバイトにつかまらないようにしなきゃなんないし、
バイトも毎日死ぬほどいそがしい、
そのうえきっつい就活で、授業にもサークルにも全然出らんない、
金がなければ勉強するなといわんばかりで、
そのうえ今度は戦争かよ、
これじゃ落ち着いて勉強なんてできないじゃん、
俺ら、学生生活、もうメチャクチャ!
学費をなくせ、くたばれ奨学金、
ぶっ潰せ、経済徴兵制」、

魂のクローン、渦、
魂のクローン、痕、

俺ら、共謀はしない、
そんなことをしたら、
奴らの、テロ等組織犯罪準備罪にひっかかってしまう、
俺ら、監視されている、
いたるとき、いたるところで、
だから俺ら、臭気で呼びかけ合う、
虫けらのように、おのずと集まり、
俺ら、無言のうちに、
飛ぶ、はねる、
襲う、

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